建設業で電子契約サービスは利用できる?メリットや法的注意点を解説
各業法の改正により、電子契約サービス(以下電子契約)の利用が広がっています。
建設業を営む企業でも、電子契約を利用しようと考えている方も多いのではないでしょうか。
ただ、建設業で電子契約を利用するのは、法的な注意点が存在します。
本記事では、以下について詳しく解説します。
- ・電子契約とは何か
- ・書類の電子化が可能となった、建設業法の改正
- ・建設業が電子契約を利用するメリット
- ・建設業が電子契約を利用する際の法的注意点
建設業で電子契約の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Ⅰ.電子契約とは?
電子契約とは、本来「紙と印鑑」によって締結していた契約を電子的に行うものです。
電子ファイルと電子署名や電子サインを使って、インターネット上で契約を締結し、そのまま電子データとして企業のサーバーやクラウドに保管します。
郵送などの手間が必要なく、業務効率化や契約スピードの向上につながります。
従来の書面契約と電子契約の違いは、下記の通りです。
Ⅱ. 建設業法の改正で電子契約の利用が可能に
以前は各業界の業法により電子契約の利用は制限され、建設業においても工事請負契約書や見積書などの電子化はできませんでした。
しかし、デジタル改革関連法などにより、電子契約の利用シーンは広がっています。
ここからは、建設業法の改正について時系列で解説します。
2001年建設業法の改正
IT革命が叫ばれた2000年代初頭、本来書面での交付が義務づけられていた文書を電子的な手段で交付できるようにするための「IT 書面一括法」が施行。
これにともない、2001年4月に建設業法が改正され、条件付きでの工事請負契約書の電子化が可能となりました。
また、建設業法施行規則において、利用できる電子契約の「技術的基準」が明確化されました。
しかし、どの電子契約が技術的基準を満たしているかの判断が難しく、導入・利用は進みませんでした。
2018年グレーゾーン解消制度で建設業法の解釈が明確化
電子契約と一言で言っても、さまざまなサービスが存在します。
具体的には、Acrobat Signやクラウドサイン・ドキュサイン・GMOサインなど。
どの電子契約が、建設業法施行規則で定める技術的要件を満たすかを解決するために、2018年政府が「グレーゾーン解消制度」を設けました。
グレーゾーン解消制度とは、新規事業が既存の法律と矛盾していないかを確認できる制度です。
つまり、電子契約を提供する各事業者が、建設業法を満たすか否かを確認できるようになったということ。
グレーゾーン解消制度で認められた電子契約であれば、工事請負契約書の電子化に必要な技術的要件を満たし利用可能です。
2021年デジタル改革関連法の施行
2019年9月にデジタル改革関連法が施行されました。
新型コロナウイルス感染症などの影響により、政府は押印のための出社を問題視し、デジタル改革関連法において建設業法を含む48法律を改正。これにより、契約締結前の見積書も電子化可能になりました。
Ⅲ.建設業が電子契約を利用する4つのメリット
建設業が電子契約を利用するメリットはさまざまです。
ここからは、建設業が電子契約を利用する以下4つのメリットについて、詳しく解説します。
- 1.コスト削減
- 2.業務効率化
- 3.契約締結スピードの向上
- 4.コンプライアンス強化
1.コスト削減
書面で契約をする場合、切手代などの郵送費や封筒・用紙が必要です。
郵送費は、簡易書留やレターパックを利用したり、場合によっては返信用封筒を入れたりする場合もあるでしょう。
また、送付状の作成などの送付準備にも手間がかかり、人件費もかかります。
電子契約であれば、すべてインターネット上で完結するため、切手代などは不要。
また、電子契約を利用した場合、印紙税が不要となる点も大きなメリットです。
2.業務効率化
書面で契約を締結するには多くの手間がかかります。
書面契約の場合の契約締結の流れは、下記が多いのではないでしょうか。
- 1. 契約書を作成し、相手と内容の確認・擦り合わせを行う
- 2. 契約書を印刷し、製本や押印する
- 3. 送付状や封筒を用意し、封入・送付する
- 4. 返信された契約書の内容を確認する
- 5. 決められた場所に保管する
電子契約を利用する場合は、すべてインターネット上で完結するため、契約書の印刷や製本・送付状作成・封入などの業務が必要ありません。
また、インターネット環境さえあれば操作できるため、現場などでも業務ができ、わざわざ会社に行く必要もありません。
3.契約締結スピードの向上
書面で契約をする場合、なかなか契約書の返信がなく、ストレスを感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
電子契約を利用すれば、早ければ数時間で契約締結が完了します。
なかなか返信されない場合は、簡単に催促の通知を送ることも可能。
また、相手に情報入力や署名して欲しい箇所は必須項目にもできるため、記入漏れなどで再度相手に送るなどの手間もかかりません。
4.コンプライアンス強化
書面契約の場合、キャビネットなどに保管していたとしても、第3者や社員が閲覧できます。
電子契約を利用した場合は、閲覧権限などが細かく設定できるため、情報漏洩を防げます。
また、Acrobat Sign(電子契約)を利用すれば「最終監査レポート」が締結契約とともに保存されます。
最終監査レポートには、誰が・いつ・何をしたのかということ細かな履歴が残るため、争いごとなどになった際の有力な証拠として利用可能。
締結後のデータは、Adobeの日本データセンターにPDFにロックをかけ保存されるため、改ざんなどはできません。
これらの効果により、コンプライアンス強化につながります。
Ⅳ.建設業が電子契約を利用する際の法的注意点
さまざまなメリットがある電子契約ですが、利用には法的な注意点があります。
ここからは、契約の方法(建設業法)と保存の方法(電子帳簿保存法)の2つにわけ、法的注意点について解説します。
1.電子契約を利用する際の「建設業法」における注意点
前述の通り、工事請負契約書の電子化には、建設業法の要件を満たす必要があります。
締結前に必要なこと・技術的基準にわけて解説します。
締結前に必要なこと
契約を締結する前に、電子契約にて締結することについて相手に承諾を得る必要があります。
下請取引適正化推進講習会テキストで紹介されているフォーマットを利用するか、フォーマットをもとに、自社用に作成すると良いでしょう。
出典:下請取引適正化推進講習会テキスト
技術的基準
契約書の電子化と聞くと「メールで締結して良い」と考える方もいるかもしれませんが、電子メールでは建設業法の定める技術的要件を満たせません。
具体的な要件は以下の3つです。
- 見読性:
- 当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること
- 原本性:
- ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること
- 本人性:
- 当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること
特に2つ目の原本性の要件は、利用システムの機能で満たす必要があります。
現状おもなシステムは大きく下記の通りで、改変を帳簿などに記録する・権限付与機能により改変できないようにするなどの措置では認められないため、ご注意ください。
- 要件を満たす電子契約
- 要件を満たすEDI取引システム
- 要件を満たすブロックチェーン技術などを利用したシステム
2.電子契約を利用する際の「電子帳簿保存法」における注意点
電子帳簿保存法対応は、取引関係書類のデータでの保存に関する要件を定めた法律です。
昨今「電子帳簿保存法 電子保存の義務化」が話題となり、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
電子契約を利用して締結した工事請負契約書も電子帳簿保存法 電子保存の対象になるため、要件への対応が必要になります。
電子帳簿保存法 電子保存において求められる要件は、下記の通りです。
上記、要件に対応していない場合、税制上の罰則を受ける可能性があるため、ご注意ください。
要件への対応について詳しく知りたい方は、下記より関連記事をご覧ください。
Ⅴ.まとめ
本記事では、建設業における電子契約利用のメリットや法的注意点について解説しました。
建設業で電子契約を利用すれば、コスト削減や業務効率化で大きなメリットが得られます。
導入に関するご不明点やご要望などあれば、お気軽にご相談ください。
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